「蘇生するユニコーン」について

画像: 平野真美 作品 「蘇生するユニコーン」

Revive a Unicorn
This work blings to life an imaginary animal from where it had been laid to rest as a corpse in the human mind. Creating the forms of its skeleton, internal organs, muscles, skin, and other body parts, pumping air into its lungs, and giving circulation to its blood, it breathes life into the unicorn the symbol of purity. This also serves as a moment to revive our lost dreams, hopes, and imaginings.

幻想の蘇生
「蘇生するユニコーン」は、非実在の生物であるユニコーンを制作によって実在させ蘇生する試みであり、その過程を段階的に発表しアーカイブ化するプロジェクトである。
骨や内臓、筋肉や皮膚など、生物を構成するあらゆる要素を制作することで「実在」を目指し、同じく制作した肺に人工呼吸器をつなぎ呼吸をさせることで「蘇生」を目指す。
骨や内臓は制作が進むにつれ筋肉や皮膚に覆われ見えなくなるため、製作途中の段階で展示発表し記録に残していく。

制作の発端は、非実在の生物の死を実感したことに起因する。
幼いころから私の周りは物語に溢れていた。物語に登場する不思議な生物とは友達のように遊ぶことができたし、私はなるべくその気持ちを忘れないよう、失わないよう年を重ねていたつもりだった。しかしいつからか、物語に登場するような架空の生物がこの世に存在しないことを知っていた。彼らの非実在を実感した瞬間、彼らは脳内で息耐え屍となって横たわっていた。

どうして私は彼らを殺してしまったんだろう。どんな動機で彼らを殺したんだろうか。生きていくために不可欠だったのだとしたら、どうして私はこの死体を口にすることなく、屍のまま脳内に放置しているのだろうか。

この生物は殺してはいけなかった。
私は、死体として未だ脳内に横たわるこの生物を、生き返すことができるだろうか。
架空の生物を制作によって実在させ、人工呼吸器によって息を吹き返させることは、自分が失った幻想を蘇生させるということだ。私は現実世界で彼らに会いたい。

骨や内臓・筋肉などを制作し呼吸をさせる一連の手法は、病気の愛犬をこの世に保存するため複製を制作し呼吸をさせた前作「保存と再現」と同様だが、今作では生体練成の解像度を高め、より実在の生物に近いフォルムを追及する。
彫刻のように外部から形を彫りだしていくような制作方法ではなく、骨や内臓・筋肉など生体を内部から模写し組立て、その結果として形が現れるものである。
生物が命を成す構造そのものから模写することで、非実在の生物を実在に近づけ、蘇生させることが目的である。

昔は実在すると信じていた空想上の生物は、今は実在しないと分かっている。
存在を否定されたその生物は、人々の脳内に死体となって横たわっている。
私は出来る限りの制作を行い、その生物を実在させ、肺に空気を送り 息を吹き返させる。
それは、亡失した幻想を蘇生させる瞬間である。