胸骨・肋骨・胸椎 2

6月第1週  胸骨・肋骨・胸椎 画像1

助骨・胸骨が出来始めたので、それぞれを切り離しさらに形を整える。その合間に胸椎を作っていく。

胸椎は先週みた骨格標本のスケッチと本と、ネットでたくさん調べて形を掴んでいく。胸椎の前後のへこんでいる部分に助骨結節が繋がる。助骨結節は1番目から18番目に進む毎に形が目立たなくなっていく。美しいのは棘突起の長さと傾きで、それも18本規則的に長くなったり短くなったりしていく。

制作の際参考にした「骨格標本のつくりかた」は、地方の高校の教師であるゲッチョ先生が生徒たちと一緒に拾った動物の死骸から骨格標本を作っていく本で、簡潔なスケッチと説明がわかりやすい。頭蓋骨のときもお世話になった。長年の謎だった、四足動物の肩甲骨はどうやって胴体と繋がっているのか問題もこの本で解決した。そもそも私達の前腕骨~上腕骨から肩胛骨は、鎖骨によって胸骨に繋がっているんだけど、馬とか犬とかは鎖骨がないので骨格標本だと腕が宙ぶらりんになっている。進化の過程で走りやすいように鎖骨がなくなり、今は筋肉によって肋骨の上に繋がっているそう。鎖骨がないなんてと思ったが、鎖骨があるのは手で何かを行う動物たちの特権なのかもしれない。急に自分の鎖骨がモノリスみたいに思えてきた。

私の制作は、それまで得た知識や経験から作品が生まれるのではなく、作品制作によって新たに知識が増えたり設問が現れたりして、その疑問の深遠に溺れながらなんとか息を続けて制作を進めていくことが多い。
知恵の結晶のように思えてきた鎖骨だけど、私の鎖骨は折れた跡があるそうだ。あるそうだっていうのは、何かでレントゲンを撮ったときに医師から言われてはじめて知ったからで、ものすごく幼い時に知らずに折れて勝手にくっついたんだろうけど、知恵の結晶が折れて勝手に治っているのがなんだか面白い。

ある程度形を作ってからは、18本ある胸椎と肋骨と胸骨をひたすら研磨していて、気づいたら頭が研磨の粉で真っ白になっていた。研磨には大学3年生の時に買ったリューターが大活躍する。スポンジ状の両面テープに100番台のヤスリをつけて、リューターの先端に装着してひたすら表面を磨いていく。つるつるにしたいが、生き物の骨はそんなに綺麗じゃないからほどほどにする。手を込んで作りすぎると人工物感がでてしまうので、バランスをみて気をつけながら制作している。でもこの生物は人工物で、そこに浪漫を感じることもある。その作りこまれた妙な綺麗さが、観た時の違和感を生んだら面白いかもしれない。

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スーパーボールのケイティペリーのやつ
金曜ロードショーがアズカバンの囚人で、やっぱり飛びぬけて良くて小説を読み返したりしていた