頭蓋骨・角・顔の皮膚・植毛

このサイトは知らない誰かに作品のことを知って欲しくて作ったけど、アクセス解析を見る限り自分しか見ていないのでこれからはこの先の自分のためだけに書くことにする。

前回の記事以降の話である。

ぎふ芸術祭の展示が終わった7月、ユニコーンは家に帰ってきた。「蘇生するユニコーン」はコンペに関係なく、何もない2014年冬にこっそり始めた個人的なプロジェクトだったから、まずその何もない状態に戻ることにした。私とユニコーン2人だけの関係。

次にユニコーンの顔を正面から捉えた絵を描いた。描いた絵はiPhoneの待受にした。そのあと姉に向けて、犬にユニコーンの角が生えた絵を描いた。(姉は喜んだ。)

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ユニコーンの顔を作り直すことにした。頭蓋骨は気に入っていたのでそのままにして、まず角を作り変えた。

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上から順に、元のツノ、新しいツノ着色前、着色後、クレイ原型。

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元のツノがまっすぐだったのに比べ、新しいツノは歪みが大きい。
今はユニコーンや人の持つ夢や希望などに対して純粋だけでない禍々しさを感じている。

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筋肉と皮膚をやり直し、目と鼻と口の周りと耳は、ピンセットで一本一本植毛した。これはだいぶ好きな作業で、この頃家族の入院で病院と家を何十日も往復していたけど、毛を植えていると心が落ち着いた。でも時間はかなりかかった。

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眼球も新しくして、ユニコーンと視線が合うと形容し難い気持ちになった。そんなことはないと思っていたけど、目が合うとかは大事だと再確認した。

それから首から胴体と前肢も、筋肉と皮膚を作り変えた。今回はとにかく痩せさせたかったので、筋肉はあまり無く、肋骨を浮かせた。四足歩行の動物は地面に向かって筋肉が落ちて痩せていくので、背骨や助骨、骨盤や大腿骨が浮いてくる。

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後肢に進む前に、内臓も作り変えた。

この辺りで2017年が終わった。つまり夏以降、社会参加を全くしない生活だった。

家族の存在が有り難かった。映画は劇場でも家でも沢山観たし、図書館には定期的に通って沢山本を借りた。ヨーダに読んだのか?と聞かれたら、返す言葉に詰まる程度。

この一年のことを先の自分はなんと思うだろうか。ユニコーンとこんなに過ごせる時間はあと僅かかもしれない。ユニコーンは何度も私を救い人の形に留めてくれた。それは制作の最初に掲げたコンセプトにかなり近かった。

物は時間によって劣化する。ユニコーンを作り終えたら、ユニコーンは死んでいくのだろうか。劣化によって、ゆっくり自殺していくのだろうか。死んでほしくないと、何度作り替えても、蘇生しても、その度に何度も死ぬことになるだけかもしれない。生まれ変わることはその都度死ぬことだから。

「保存と再現」の犬は古くなった。顔に死相が出ている気がする。死んでほしくないから作ったのに、その呪縛から逃れられるわけではなかったのかもしれない。この子たちを動かさなければ。呼吸をさせて、一緒の時間を過ごさなければ、どうして悠長に暮らせるだろうか。無限を追うたびに限りある現実が付きまとうばかりなのに。